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2005/08/10

05/08/10

 お盆過ぎまで帰省するので、実家で楽しみに読む本として、きのうのうちに馬場の芳林堂で奥泉光『モーダルな事象』(文藝春秋)を買ってきたのだったが、駅周辺に倒れる早大生男女をよけながらたどり着いたホームで早くも読み始めてしまったのには自分の意思の弱さを過小評価していたとしかいいようがない。
 しかしこれは面白いよ。

 まだ本篇全500ページあまりの200ページにさしかかった程度だけれども、大阪の短大に勤める中年の国文科助教授が、太宰治と親交のあった無名作家の「遺稿」に出遭って瀬戸内海の小島を訪れるとか、遺稿の出版にまつわるらしい殺人事件に首をつっこむジャズシンガーの女性とその元夫である推理小説愛好家のコンビとか、挿入される新聞・雑誌記事の作りこみ具合とか、かなり「惜しげもない」進みゆきである。「あられもない」とか「臆面もない」みたいな、「~ない」の表現がなぜか似つかわしい気がする。助教授の見る夢に、ゲートル巻きで丸眼鏡の男たちが登場してくるのに至っては、「またそこにいくのか」ではなく「奥泉の特盛」とでもいった賛辞を呈したい。過剰なものは善である。本当か。
 なにより私が好きなのは、『鳥類学者のファンタジア』の頃に比べると、ベタなギャグが冴えている点である。笑わせようという部分が変に浮いてしまうことなく文脈にハマっている。それは、全部とはいわずとも相当の割合を「笑わせよう」の文章が占めているということなのかもしれないのだが。ここまででいちばんよかったのは、176ページにある会話中の台詞、《「すごい。セミなんかもあれでかなりすごい」》であった。
(本書巻末には、入門めいた奥泉論と、本人へのインタビューが付いているようだ。もちろんまだ見ていない)


モーダルな事象
モーダルな事象
posted with amazlet on 06.02.03
奥泉 光
文藝春秋 (2005/07/10)
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