趣味は引用
ヴォネガットのこと その1

 われながらよくわからなくなっているが、わからないまま、即物的にヴォネガットの話を続けてみる。
 カート・ヴォネガットがこれまでに発表した14の長篇小説は、すべて邦訳されてハヤカワ文庫に入っている(ほんとは長篇というほど長い作品はひとつもないのだが、短篇でもエッセイでもないという意味で「長篇小説」である)。いまではいくつか品切れになってしまったとはいえ、海外の作家にしてはアクセスしやすいといえるだろう。大きめの書店なら古い作品もあたらしめの作品も棚に並んでいて、目についたものから読むことができるのは、作品にとっても読者にとっても望ましい状態であると思う。
 しかし、そうやってつまみ食いみたいに読んでいったらいつのまにか全作を制覇していた、という段階に達した後で、今度はわざわざ「発表順に読み直してみる」と、それまでとはまた別の印象を受けることもあるかもしれない。絶対ないとは言い切れない。ある場合もある。というか、私はそうだった。
 以下はそのような特殊な読み方をした人間が、しかも多くを記憶に頼って書くことなので、どう転んでも偏見である。更新をサボっているあいだ、一応読み返してみようかと思ったものの、むかしあんまり好きだったので気恥ずかしくなり、ちゃんと対面できなかった。『チャンピオンたちの朝食』1冊を除き、文庫はまとめて本棚の奥底にしまいこんだままである。そういうものだ。

 こんな調子ではいけない。即物的。即物的に。続く。