趣味は引用
「ベルヴィル・ランデブー」(2002)
 フランス・カナダ・ベルギー合作のアニメ映画。監督はシルヴァン・ショメという人。
 フランス。祖母と二人暮らしの少年シャンピオンは内気というより自閉症に近く、おもちゃにも飼い犬にも関心を示さない。心配する祖母だったが、あるとき彼が自転車に強い興味を抱いているのに気づいて買い与える。
 数年後、なんでそこまでというくらいきびしい祖母のトレーニングによって、シャンピオンは自転車レースの最高峰ツール・ド・フランスに出場するまでになる。ところがレースの本番中、謎の黒服マフィアが現れて、彼を含む選手たちを誘拐してしまう。孫を連れ戻すため、祖母は飼い犬を連れて追跡を始める。そう、この映画の主人公はおばあちゃんなのだった。
 かわいいアニメだったらどうしようと警戒していたが、なにしろデフォルメの文法が未知の領域にある。人物も動物も建物も徹底的に歪められ、最初のうちこそ「ものすごくグロテスクに見えるけど、むこうの感覚ではこれがかわいかったりするんだろうか」と疑念を覚えたものの、やがて「これはむしろ悪意だ」と確信するにいたる。
 タイトルにある「ベルヴィル」というのは後半の舞台になる国で、マフィアの乗った巨大な船がフランスから大洋を渡ってたどりついた先であり(祖母と犬はボートで追いかける)、物質文明の享楽と退廃に溺れる一方で街の外では老人が貧しい暮らしをしている、そういう世界だが、どう見ても自由の女神にしか見えない像がそびえ立っているのは気にしない方向で。フィクションだから。架空の国だから。
 ストーリーもデフォルメされているというのか、台詞は極端に少なく、じつは映画を見ているだけでは孫の名前もわからない。両親がいない理由も不明である。そういった説明の代わりに、上下の高さをありえないほど強調したマフィア船の造形や、重要な意味を持つ大量のカエルなど、歪みきった見所が盛りだくさん。クライマックスのどたばたも、スピードに頼らずたいへん意地の悪いアクションで構成されている。劇中で歌われる曲は楽しげで、売店ではサウンドトラックが売り切れていた。その歌詞(字幕)を憶えてるところだけ再現すれば、「♪コンスタンティノープルには住みたくない 韻を踏みにくいから / カトマンズになら住んでもいい 韻が踏みやすいから」だそうである。


※公式サイトで音楽の一部が聞けた


ベルヴィル・ランデブー
ブエナ・ビスタ・ホームエンターテイメント (2005/08/03)
売り上げランキング: 1,256
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック