2004/04/03

その60 ― ピンチョン Lot 49

競売ナンバー49の叫び

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 湖に沈められた、一個中隊の死体。〈ザ・パラノイド〉の少年少女は、この話が『急使の悲劇』なる演劇に似ている、と言い出した。

 自分で喋っておきながら「盗み聞きしてたな」と怒り出すディ・プレッソだったが、彼を追っていたマフィアたちが湖をモーターボートでやってくるのを見て「おれは逃げる」と言い残し、ひとりボートに戻り大慌てで島を去る。
 唐突に現われたディ・プレッソ、湖と骨の情報を伝えて唐突に退場である。

 そんなわけで、エディパとメツガー、〈ザ・パラノイド〉たちは、島に置き去りにされてしまった。日が暮れて自警団が助けに来てくれるまで、彼らはマリファナ煙草を吸いながら歌をうたったりして過ごす。〈ザ・パラノイド〉のスタンダードはマリファナで、どんなフィルターであれ、ふつうの煙草は吸わないんだそうである。子供のくせに、というか何というか。

 それはともかく、気になるのは『急使の悲劇』のことである。
[…] and hearing the plot of The Courier's Tragedy, by Richard Wharfinger, related near to unintelligible by eight memories unlooping progressively into regions as strange to map as their rising coils and clouds of pot smoke. It got so confusing that next day Oedipa decided to go see the play itself, and even conned Metzger into taking her. (p49)

[…]『急使の悲劇』の筋を聞いたりしていた。それはリチャード・ウォーフィンガーの作品なのだが、八人の記憶によって語られるうちに、次第に輪がほどけてしまい、彼らが吸っているマリファナの煙の、立ちのぼって行く輪や雲と同じように、とらえどころのないものになり、意味不明というに近いものになってしまった。その筋があまりに混乱したので、次の日エディパはその芝居を見に行くことにし、メツガーを説き伏せて、連れていってもらう手はずをととのえた。》p77/pp86-7

 翌日、エディパは興味津々で、メツガーは嫌々ながら、劇場に赴く。
 しかし実際に観劇しても、劇の筋はかなり込み入っており、それ以上に、筋を伝える地の文の語りは「あまりに混乱」しているのだった。

…続き

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