趣味は引用
その52 ― ピンチョン Lot 49
競売ナンバー49の叫び

前回…] [目次


 ところで、〈ザ・スコープ〉のシーンが始まるときにも、「このバーを見つけたのはムーチョから手紙が来たのと同じ日だったかもしれない」などと曖昧な書かれ方がされていた→その45
 できることなら小説内の出来事すべてを起きた時間順に並べ直した一覧表を作ってみたい自分としては、「わざと時系列がわからなくなるようにこんな書き方がされているんだ」と考えるが、店内のシーンが終わるときにもまた、《もっとも、この夜は、そこまで彼女に対して押し進めたことは言わなかったが》と、時間を確定できなくする書き方がされていたことになる。
 このバーは小説の時間を乱す場所なのか。たしかに、酒で時間を乱している人はよく見る。

■ 思いつきをもうひとつ:

〈協会〉の通信活動の背景をなす私設郵便史を研究していることから考えると、エディパたちに気さくに話しかけてきたファローピアンという男は、意外と〈協会〉の中心にいる人物なのかもしれない(そうではないかもしれない。書いていない)。

■ もうひとつ:

 前々回にもリンクを貼った合衆国郵便のサイトを眺めていたら、「郵便の再編」というトピックが目についた。もちろん、小説にあった事業の独占化なんてものではなく、南北戦争から100年あまりあとにあった構造改革である。
 →http://about.usps.com/publications/pub100/pub100_036.htm

 アメリカの「Post Office Department(郵政省)」は1971年に廃止されて「United States Postal Service(米国郵政公社)」になったという(訳語は辞書から引き写し)
 Lot 49 の出版は1966年なので、小説のなかで「米国の郵便」「政府の郵便」「正規の郵便」とされているのは前者だった。21世紀のいまとは組織がちがうのだ。
(原書ではたしか「Post Office Department」なんて表記はなしに「US mail」などと書かれていた気がするが、あまり自信はない)

 さっきのページの前後を見て、1971年の大きな改革に至る動きが始まったのがやはり1966年だったというところに勝手な「符合」を見てよろこぶような人間が書いているのだから、このピンチョン読書ノートは本当に信用できるものではないと思う。

…続き
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