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その49 ― ピンチョン Lot 49
The Crying of Lot 49 (Perennial Classics)

前回…] [目次


 トイレの壁で「WASTE」という謎の言葉と謎のマークに出遭ったエディパが席に戻ってみると、郵便配達夫から手紙を受け取っていたファローピアンが決まりの悪そうな顔をしている。手にした封筒には、合衆国郵便の消印の代わりに「PPS」というスタンプが押されていて、〈ピーター・ピングイッド協会 the Peter Pinguid Society〉の略称なのがわかる。「まずいところを見られてしまったなあ」。
“Of course,” said Metzger. “Delivering the mail is a government monopoly. You would be opposed to that.”
Fallopian gave them a wry smile. “It's not as rebellious as it looks. We use Yoyodyne's inter-office delivery. On the sly.[…](p38)

《「そりゃそうだ」とメツガー。「郵便の配達は政府の独占事業だもの。きみたちは、それに反対することになる」
 ファローピアンは二人に向かって苦笑した。「みかけほど反抗的なものじゃないんです。ヨーヨーダインの社内便を利用しているんですよ。こっそりとね。[…]」》p62/p69

 これが〈協会〉の活動だった。つまり、私設郵便である。
 産業資本主義の権化であるような巨大企業・ヨーヨーダイン社の社内便を悪用し、勝手に郵便をやり取りすることで、政府の郵便制度を侵犯してしまう。ささやかながら、これは反体制的活動なのだ。
 ここサン・ナルシソ支部をモデルにして〈協会〉の各地支部で活動が展開されていくらしいが、そのくせファローピアンは言い訳がましい。なぜか。
 理由はある。いま現在、この仕組みを使ってどのような通信が行われているのかというと、利用の大半を占めるのはべつだんテロ計画でも政府を出し抜く機密の漏洩でもなく、「お元気ですか?」程度のどうでもいい連絡なのである。
“To keep it up to some kind of a reasonable volume, each member has to send at least one letter a week through the Yoyodyne system. If you don't, you get fined.” (p39)

《「主義を何とか、まずまずの存在にしておくために、会員は少なくとも週一回、ヨーヨーダインの組織を通じて手紙を送らなければならないことになっています。そうしないと罰金を取られるんです」》p63/p70

 制度がまずあり、それを維持するために、内容がなくても通信を行わなくてはならない。メッセージではなく、メッセージを伝達する行為だけが重要になった倒錯気味の現状をファローピアンは恥じているように見える。
 それでは、その主義とやらのよってきたる理念とはどういうものなのか。そういう話になると、彼はがぜん雄弁になるのだった。

…続き
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