2008/08/28

あたらしい

 黒田硫黄の新刊が出ていた。『あたらしい朝』第1巻。

 第二次大戦中、なりゆきで海軍に入ったドイツのワカモノが世界を経めぐる話、のようにはじまっているけど、この先どうなっていくのかはわからない。「水柱にはさまれた/次は当たるぞ」とか、山のような缶詰をゲットして大殊勲とか、そういう漫画。この作者は女の子が少ないままにはしないと思うが、さて。

あたらしい朝 1 (1) (アフタヌーンKC)あたらしい朝 1 (1) (アフタヌーンKC)
(2008/08/22)
黒田 硫黄

商品詳細を見る

 ふたりいるワカモノの片方が乗った仮装巡洋艦(ずるい)というのが面白いなあと思っていたら、第1巻の最後ちかくで艦は横浜にやってきて、現実の事件と接続されるのでおどろいた(→ネタバレ)。はやく続きが読みたい。

 それで、本人じゃないにしても本人に近い人がやっているっぽいブログ「黒田硫黄の仕事」に行ってみたところ、なんかすごいことになっていた。

◆2008年
8月22日…あたらしい朝 第1巻
9月22日…短編集「大金星」
10月…大日本天狗党絵詞<新装版>第1巻
11月…大日本天狗党絵詞<新装版>第2巻
12月…大日本天狗党絵詞<新装版>第3巻(完)

◆2009年
1月…茄子<新装版>第1巻
2月…茄子<新装版>第2巻(完)
3月…あたらしい朝 第2巻


 これはもう勝手な決めつけ以外の何ものでもないんだけど、私も含め、黒田硫黄が好きと公言しちゃうような人間は、たぶんおそらく『茄子』第1巻最後の「ランチボックス」に妙な思い入れがあるんじゃないかと思う。
 そういう人にしか通じない話だが、186ページで連発される擬音の数かずは、はじめて読んだときからあたまを離れない。
 
「コー モヘー」「ペケペケペ だん!」「しゃぐしゃぐしゃぐ」「ズリャ がちょい」「ビクッ」

 順に、女の子が眠っている→目覚まし時計で4時15分に起きてスイッチを切る→はんぶん眠ったまま米を研ぐ→外からドアの鍵が外されてノブが回る→女の子おどろく、というコマで発生している音なんだけど、こんな耳をしてるからこそ、そのあと女の子と男の子が河原でキャッチボールするときのものすごい会話が書けるんだなあと思った。

「有野兄は何してんの?」「銀行員」「まじ!/すごいなそれは」「すごいだろう」「何が?」

 ちなみに黒田硫黄は、5年前の「ユリイカ」で特集されたときに「作風はマイナーなのにネットで名前を検索するとすごくヒットするからメジャーだよね」みたいな話を振られ、このように受け流していた。
黒田 それはネットで日記を書く類の人にピンポイントで当たっているということで、それは全然メジャーじゃない(笑)。》

「ネットで日記を書くの人」というのが実にいい。