趣味は引用
「ガルガンチュワとパンタグリュエル」を読んでみる  その30

[前回…]

 岩波文庫で復刊されたドストエフスキー、もとい、ドストエーフスキイの『未成年』をきのうの日曜にようやく買えたので、ちまちま読み進めつつ、ラブレー読書日記の「目次」を作ってみた。→これ。
 このブログの右端、「カテゴリー」欄にも「★目次:【読んでみる日記】」として追加。

 こうやってみると、意外にも、第1巻の真ん中は越えていることがわかった。まだぜんぜんはじめのあたりかと思っていた。もちろん、うしろにあと4冊あるのを忘れたことはない。更新の少なさを棚にあげて、もしかすると、ペースのあげ方・飛ばし方を考えたほうがいいのかもしれない。「読んだものについて何か書く」のには、いくらでも工夫の余地はある。
『未成年』もまた長い小説だけど(文庫3冊)、「ただ読む」ぶんには、1ページ1ページ、順番に全ページをめくっていくほかない。それはこのうえなくどんくさい(=工夫しようのない)作業であるはずなのに、そうやって読んでいるときがいちばん早く進む。何かがねじれているような、何もねじれてなどいないような。
 そういえば『未成年』の書き出しは、びっくりするほどねじれていないので、逆にものすごくねじれているのじゃないかとこちらを疑わせる。
《とうとう我慢がしきれないで、わたしは自分の実生活における第一歩の記録を綴ることに決心した。》上巻 p5

「『未成年』を読んでみる日記」をやるつもりは、いまのところない。



未成年 上 (1) 未成年 上 (1)
ドストエフスキー (1940/07)
岩波書店

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続報(2)
 ピンチョン新作のタイトルが発表された模様。
 "Against the Day"

 ・pynchonoidの記事(→というかリンク
 ・ヤフーニュース(New Thomas Pynchon novel is on the way
 
 文末に署名があったために、ほんとにピンチョンが書いたのか? と局地的に話題になったamazon掲載の「梗概」も、ほんとにピンチョンが自分で書いたみたい。でもいま現在、amazonではまだ「タイトル未定」。
「ガルガンチュワとパンタグリュエル」を読んでみる  その29

417 :名無しさん :2006/07/18(火) 23:47:56.24 ID:7F03toXP
一般人に聞くなw

418 :名無しさん :2006/07/18(火) 23:47:57.21 ID:3ZKUe/Yd
一般人に聞くなよアンヌwwwwwwwwww

419 :名無しさん :2006/07/18(火) 23:47:57.55 ID:rCcQFTOa
民間人に知恵を頼るのかw

420 :名無しさん :2006/07/18(火) 23:47:58.25 ID:QCPlUv4Q
民間人に聞くか

421 :名無しさん :2006/07/18(火) 23:48:02.52 ID:ldMIiekb
なんでダンに頼るのかな

422 :名無しさん :2006/07/18(火) 23:48:02.77 ID:HEfd754d
風来坊に聞くなよ

 MXテレビではじまった「ウルトラセブン」を見た。相変わらず変な第1話だった。なにしろあの番組、どうしてセブンがモロボシダンになっているのかという設定は、本篇を20話近く見ないと明らかにならないのである。なんて知ったかぶって書いているが、幼時の記憶を上書きしようと思った私がセブンを全話通して見たのはたしか2004年の冬だから、やっぱりただのにわかファンである。以上、日記。

[前回…]

 雨あられのように降り注ぐ砲弾も、ガルガンチュワにしてみれば葡萄の粒のようなものだった。この巨人の小便で溺れ死に、川を埋めつくした敵の屍を踏み越えて一行は進む。
 ついに城に戻り、父王グラングゥジエと再会を果たすと、人々はみな、かつてなく有頂天になってよろこんだ。どれくらいよろこんだかというと、ガルガンチュワの母である王妃ガルガメルはよろこびのあまり死んでしまう、それくらいよろこんだ。
 母親の死に何の関心も示さないガルガンチュワが櫛で頭髪を整えていると、先だって撃ちこまれた砲弾がばらばら落ちてくる。それを見たグラングゥジエは、てっきり虱だと勘違いした。
《──やれやれ、息子、そちはモンテーギュ学寮の鷂虱[はしたかじらみ]を、ここまで持ってきよったのか? 左様な学校へ入れるつもりはなかったのじゃが。》第37章 p175

 何のことでしょう、というわけで訳者による註を見てみれば、またしてもちょっと信じがたいような情報が記されている。
《モンテーギュは、パリ大学中の学寮の一つ。不潔を以って知られる。一三一四年にジール・ド・モンテーギュ Gilles de Montaigu によって、現在のサント・ジュヌヴィエーヴ図書館のあるところに建てられ、約二百人ほどの貧しい学徒を収容した。寮長スタンドンク Jean Standonck の意見によって、劃一主義的な極めて厳格な学風が行なわれたらしく、衛生の不備もこれに加わり、死亡者、罹病者を続出せしめた。pp344-5 (太字は引用者)

 これはラブレーの創作ではなく、現実のお話のはずである。700年前とはいえ、このような世界と1年1年連続していった末にいまのこの現代がつながっているという事実には、あたまではわかっていても、なんだか茫然とさせられる。『ガルガンチュワ』の本篇で描かれる無茶苦茶な出来事と、註で言及されるむかしむかしのヨーロッパの出来事があんまり区別なく見えてしまう、そんな例はここだけではない。
 出版当時、リアルタイムで『ガルガンチュワ』を読んだフランス人の目に、この物語の世界はどんなものに映ったのか。いまの私たちが考えるのよりも、意外と近しいものだったのではないか。そこらへんの事情をできる限り細かくつつきまわせるよう材料を並べるのが、訳註の役割のひとつであるだろう。私はもっと錯覚し、茫然としたいので、無茶苦茶な訳註だけを選択的に読んでいきたい。
 とはいえ、次に続くガルガンチュワの口のなかに紛れ込んでしまった運の悪い者たちの話なんかを読めば、「いや、これは絶対にない」と目を覚まされたりもするのだが。

続報
 本場のamazonでは、はやくもピンチョンの新作が予約できるらしい。
「梗概」もアップされたり引っ込められたり、といった様子が、ピンチョン関連のニュースを集めたブログpynchonoidでメモされている(July 15, 2006分)。
 http://pynchonoid.blogspot.com/2006/07/book-description.html

 なんだろう、『V.』みたいな話なのかな。しかし992ページて。
「ガルガンチュワとパンタグリュエル」を読んでみる  その28

[前回…]

 ガルガンチュワは何をしているのか。
 と唐突に書き出してみたが、サボっているうちに話の状況を忘れかけている。ふつう、本を読んでいる途中で2週間も3週間も中断してしまったら、あきらめるか、あたまから読み直すしかないが、私がここで日記をつけていたのは、こういう不都合に備えてだったのだ、ということにした。

 それでおさらいしてみると、ガルガンチュワの留守中に、祖国「乾喉国」は、隣国レルネの軍隊に攻め込まれる。敵の大将はピクロコル王。乾喉国の人びとは、(ジャン修道士を例外として)さんざんひどいめにあわされる。交渉は決裂。この事態を受けて、ガルガンチュワ一行はひそかにパリから帰る。しかしそこでまずクローズアップされるのは、ジムナストなる家臣の変態的な活躍であって、主人公たる王子ガルガンチュワの言動はあんまり描かれていないのである。父からの手紙を受け取る→大急ぎでパリを発ち戻ってくる、というこの数ページのあいだには、これこれこういうことがあった、という説明だけで、ガルガンチュワの口にした台詞のひとつも書かれていない。そこで冒頭の疑問に戻る。
 いったい、ガルガンチュワは何をしているのか。

 ところが、第36章から読むのを再開してみると、この巨人がいよいよ行動を起こす。それは、ジムナストが偵察から戻り、敵軍は「強盗追剥山賊の類にすぎない」と告げたあとだった。
《するとガルガンチュワは、前に記した通りの面々を従えて、その大牝馬に跨り、途上に一本の丈高い逞しい立木を見つけたので、(これは普通一般には聖マルタンの樹と呼ばれているもので、その昔聖マルタンが、この地に立てた法杖と信ぜられているからである。)こう言った。「願ったり適ったりのものがあるぞ。この樹は、わしの法杖にもなれば槍の代りも相勤めるぞ」と。》p171

 なんだか不穏な出陣である。一応、あくまで「乾喉国=善/レルネ=悪」という前提があり、そのうえで、線引きを無化するような乾喉国側の戦いっぷり(ジャン修道士、ジムナスト)が描かれてきたわけだが、いまの引用部にあるガルガンチュワの台詞、「槍の代りも相勤めるぞ」には、巨人なぶんだけ、スケールの大きい虐殺を予感させる雰囲気がある。いや、面白いからいいんだけど、というか、主人公ガルガンチュワの戦いぶりを私は期待してさえいるのだが。
 ──などと考えている場合ではなかったのかもしれない。
《その間に、ガルガンチュワの牝馬は、腹の重荷をおろすために放尿をしたが、さて何しろ、それが大変な量だったので、七里にも及ぶ洪水となり、尿はヴェードの浅瀬めがけて流れくだり、川の流れと合して大氾濫となってしまったので、そこに控えていた敵の全部隊は、左手の丘陵へ逃れた者どもは別として、大恐慌のうちに溺死を遂げてしまった。》

 もうはじまっているのだ、虐殺は。

メモ
 6月なかごろのニュースだから、いまや「最新情報」でもないが、私はさっき知ったので驚いた。こういうエクスキューズはもういいか。

■トマス・ピンチョンの新作が完成
 http://www.calendarlive.com/printedition/calendar/calwknd/cl-wk-quick22.3jun22,0,7170142.story

 刊行は今年12月の予定で、いまのところタイトルさえ未公表。内容なんて外部に洩れるはずもない。
 にもかかわらず、ずいぶん前にウェブ上のどこかで、「19世紀から20世紀への転換期、スイス人の女性数学者がハンガリーから冒険をはじめるらしい」とかなんとかの噂を見たおぼえがある。妙に具体的なぶん、かえって眉唾。「女性数学者」はロシア人だったかもしれない。「舞台は1897年のシカゴ」という説も飛び交っている模様。いずれにせよ翻訳されないと読めないんだから、せいいっぱい妄想をたくましくして待ちたい。
 しかしあと何年かかるのか。
 現時点での最新作"Mason & Dixon"は1997年の出版で、ちょうど1年前に聞いた「予定」の通りに進んでいたとしても、読めるころには2008年になっている。その前の作品"Vineland"は、1990年の出版から訳書の刊行まで、予定を大幅に延長して8年かかっている(佐藤良明訳『ヴァインランド』新潮社)。


■TBSの昼ドラ「吾輩は主婦である」が今週で終了

 全40話と聞いたときは「すごい長い」と思ったものだが、気がつけばあと5話を残すのみ。8週間で終わるとされているものが、本当に8週間で終わる。すごい。


■MXテレビの円谷特撮「怪奇大作戦」も火曜で終了

 最高傑作とされる「京都買います」も先週無事に視聴できた。11日の放送が最終話「ゆきおんな」(→詳しいサイト)。終わってしまう。でも来週からは、おなじ時間帯(火曜23:30~)で「ウルトラセブン」がはじまるからひと安心。


■山形浩生がレムの小説をアップしていた
 http://cruel.org/other/rumors.html#item2006062601

 『宇宙創世記ロボットの旅・前史』の最初をちらりと眺めて腰を抜かす。なんだこれは。
 おなじくアップされているサンリオ文庫のカルペンティエール『バロック協奏曲』には近所の古本屋でたびたび遭遇するものの、いつも値段が高すぎて手が出なかった。


■その古本屋で、きのう、ラブレー「ガルガンチュワとパンタグリュエル」(岩波文庫版)5冊セットを発見

 2500円だった。いままで見たなかで最安値。状態も、私の持ってるのよりだいぶよさげ。ほしい人いますか。


■そんなわけで2週間ぶりに更新

 すこぶる元気でした。